認知症の方に対するコミュニケーションの手段の一つとして挙げられるのがバリデーション療法である。1963年にアメリカで提案された、認知症患者の尊厳を認め、感情に共感して接する技法だ。認知症患者は混乱した行動をとることがあるが、これらを何かしらの意味がある行動だと捉えるのが特徴である。認知症の方のこれまで人生からどうしてこのような行動をしてしまうのかを考え、適切に対応することを目的としている。バリデーション療法の重要なテクニックがセンタリングだ。認知症の方に対して介護を提供する際には、介護者は自分の中からマイナスな気持ちを取り除く必要がある。そのために、下腹に集中してゆっくりとした呼吸を行い、相手に集中できるように意識を整える。
また、会話をする時には嘘をつかないことも重要だ。相手が信じる事実を否定せず、相手の主観に基づいて接することで信頼関係を築いていく。ポイントとなるのは、相手が言ったことを言い返すリフレーシングだ。相手の主張を理解しようとしている気持ちを伝えることで安心感を与えられる。相手の気持ちを理解するためにはオープンクエスチョンが有効である。はいやいいえで答えられる質問ではなく、5W1Hの質問をすると具体的な言葉を引き出しやすい。相手の言葉がよく分からないという場合は曖昧な質問をしてみると良いだろう。あえて極端な言葉遣いをする方法もある。例えば、不満を漏らしたときに、ひどく悪い状況を想像させることで、感情を整理して落ち着かせる効果が期待できる。このようにバリデーション療法については、様々なコミュニケーション技法を用いながら行う必要がある。