認知症を患っている高齢者への新しい介護の形としてバリデーション療法が注目されている。認知症は過去の記憶と現在の状況の区別がつかなくなり、記憶が混濁して正しい認識ができなくなるのが特徴だ。認知症の方は物を盗まれた、暴力を振るわれたといった被害妄想の症状があるが、これらは記憶の混濁により生まれる幻覚や幻聴が原因である。これらの症状は第三者が客観的に認識できないので頭ごなしに否定されることが少なくない。症状を否定された人は自身が拒絶されたと感じ、そのストレスが認知症の症状を進めてしまう。そのような事態を防ぐためにも介護の現場ではバリデーション療法が効果的とされ、取り入れる所が増加している。

バリデーション療法を採用する利点として、認知症の方が孤立するのを防ぐ点が挙げられるだろう。多くの認知症患者は自分が拒絶されることには非常に敏感であり、不遇な扱いを受けたと感じると一気に症状が進んでしまう。そうなると介護が非常に困難なものとなってしまうので、介護の手間を省く意味でもバリデーション療法は重要と言えるのだ。バリデーション療法は共感を基本としたコミュニケーションなので、認知症患者の一挙一動が頭ごなしに否定されることはない。自身の言動を受け入れてくれる相手に対しては好意を抱くのが普通であり、それは認知症患者も例外ではない。バリデーション療法は介護現場を穏やかにする効果をもたらし、認知症患者が健やかに暮らせる環境を維持するのに必須と言えるだろう。