バリデーション療法は患者に対する共感や傾聴を重視することでストレスの緩和を図る療法だ。特に認知症の症状のある要介護者には適した療法とされており、医療や介護の現場で注目を集める療法である。脳の萎縮が原因で認識障害で記憶が混乱する認知症患者は、過去と現在の状況や記憶の区別がつかないことが多い。その結果、徘徊や幻覚、幻聴などに見舞われてしまうのだ。従来は認知症患者を適当にあしらったり、言い分を頭ごなしに否定して体を拘束するなど倫理的に問題のあることも行われてた。これらは、認知症による認識障害で意思の疎通が不可能とされていたためである。しかし実際は認知症を患っている人でも他者との意思疎通は可能であり、邪険に扱われることで強いストレスを感じ、認知症が進んでしまうこともある。
その点、バリデーション療法は相手の言い分に共感することを第一とした療法なので患者がストレスを抱えることはほとんどない。都合良く話を合わせたり、ごまかしをせずに患者自身の意思で言動を振り返るように見守るのが大きな特徴と言えるだろう。非常に手間のかかる療法だが、誘導や強制がないので患者の精神的な負担を大幅に軽減させるのに最適だ。手のかかる厄介な患者ではなく、対等な立場であるひとりの人間として扱う姿勢が患者の尊厳を尊重することに繋がる。認知症患者の気持ちが穏やかになり、症状の進行を遅らせる効果が期待できるのもメリットのひとつだ。介護する側とされる側との間に強い信頼関係ができ上がるので、介護の質を向上させることができる。